遠い日の記憶 第7話

客先との打合せまでにはまだ時間がある。「この辺りも随分と変わったなぁ」、駅前の再開発の影響で区画整理され、今では洒落た雰囲気の街並みになっている。久しぶりに辺りを散策してみたくなった。大通りから一本入ると閑静な住宅が広がる。住宅街の中央には緑豊かな公園、そこに一際目立つ大きな銀杏の木がそびえ立っている。

 

「でかいなぁ、樹齢何年ぐらいだろうか?」、下から上を見上げると、さらにその木の大きさに圧倒される。この季節、銀杏の木には一枚の葉っぱもなく、少し寂しげであったが、落葉は絨毯のように木の下に広がっていた。銀杏の木を背もたれ代わりにその絨毯に腰を下ろす。なんだか急にうとうとと眠気がさして来た。

 

 辺りは銀杏並木が連なり、青々とした葉っぱが茂っている。心地よい風がそよそよと吹いていて、とても心が落ち着く、「こんなに気持ちの良い所があったんだぁ」、空気も清々しく、空も高い、懐かしい気持ちで心が満たされて行く。

「プ、プゥー!」、クラクションの音で目が覚める。いつの間にか眠っていたようだ、まだ5分と経っていない、夢にしてはとてもリアルだった。「これって、銀杏の木の遠い記憶?」、いや、何かを伝えたかったのかもしれない。

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