サボテンの子供たち 第19話

 友人の引越しの手伝いをしたとき、彼と出逢った。それは、どっしりとまん丸い、貫録のあるサボテン!?だった。引越しを手伝ったお礼の代わりに彼を譲り受けたのだが、余り世話もせずベランダにただ放置していたのである。初夏の頃、部屋の中から窓越しにベランダに目をやると、奇妙なモノが目に飛び込んできた。どっしりとまん丸く、貫録があったあのサボテンが、少し歪にしおれ、さらに、何か小さな丸いモノを沢山、その身に宿していた、「これって、サボテンの子供?」

 

素人ながら、サボテンの子供たちを別の鉢に植え替えてあげなければ可哀そうだと想った。その瞬間、ビジョンが見えてきた。サボテンの子供たちが何やら言いたいことがあるらしい、「植え替えをするならカラーサンドにしてくれ」、「容器は透明なブルーのガラスにしてくれ」、「カラーサンドの色は一色ではなくカラフルにボーダーラインにしろ」、注文の多いサボテンの子供たちだった!

 

言われた通り、植え替えをしたところ、彼らはご満悦そうに、イキイキと輝いて見えた。ところが三日もたたないうちにまた不満を言い出したのだ。水はけが考えていたのと違ったらしく今度は、「素焼きの鉢にしてくれ」、「土は前の鉢の時のようにしてくれ」、云々と、次から次へと注文が続き、最終的には、彼らは一人残らず、枯れ果ててしまったのだ。「いったい何だったんだろう?」、でも振り回されるだけ振り回されたけど、彼らと過ごした時間はとても楽しかった。

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