暗闇を裂く閃光 第20話

その夜は何故だか眠りに付けず悶々と時間だけが過ぎて行くばかりだった。いつもと何かが違う気がして、頭が勝手に思考を繰り返している。「最近は地震も多いし大きな地震が来たら…」、などと不毛な妄想の迷宮に入り込んでしまっている。目を閉じていても頭は起きている。「眠ろう、眠ろう、明日は会社もあるし」、焦れば焦るほど眠れない。隣では彼女が気持ちよさそうな寝息を立てている。「くっそう!」

 

その時、何かの視線を感じて壁際の棚に飾ってある高さ30cmはある両手を胸の前でファイティングポーズを取っているウルトラマンのソフビ人形に目をやった。「!!」、ウルトラマンがこちらを睨みつけている。その形相はもはやニセウルトラマンの様に目がつり上がり、眼光は赤黒く光っている。「うっ!身体が動かない、金縛りか!?」、人形は、不気味な笑みを浮かべて何やら動きはじめた。

 

ソフビで出来ているウルトラマンの人形には可動するパーツは無い、なのに胸の前にある両手が見る見るうちに交差していくのが分かった。「これって、もしかしてあの・・・」、次の瞬間、スペシウム光線を放って来たのだ。「うわぁ!!」、思考はプツリと途切れ気が付くと朝になっていた。「夢!?」、いや、「あれは確かにウルトラマンが」、昨夜の出来事を彼女に話すと、「夢だよ夢!」と一蹴された。棚の上のウルトラマンは何も無かったかのごとく、こちらを見下ろしていた。

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