狛犬の頼み事 第26話

いつもの喫茶店でランチを食べながら窓越しに通りを眺めていると、狛犬神社の鳥居から1匹の白い犬がこちらに向かって走って来るのが見えた。「あれ!」、以前にもこんなシーンを見たような気がする…。

 

「おい、お前!」、突然、誰も座っていないはずの座席の方から声が聴こえてきた!「この前はナポリタン旨かったよ!」、小柄で白い犬が眼前に座っている。「あっ!」、以前ナポリタンを食い逃げした犬だな、「ナポリタン返せよ!」、狛犬はそんな事お構いなしに話し始めた。「お前さんに頼みがあるんじゃ」、狛犬は一方的に頼み事を告げると煙りのごとく消え失せた。

 

白昼夢でないことを確認する意味でも、狛犬神社の狛犬の前に行ってみることにした。「へ~ぇ!」、さっき現れた狛犬が言っていた通り、頭の上がカラスの糞まみれに、「これは大変!」、用意してきたペトボトルの水とタワシでキレイにすると、狛犬の顔が喜んでいるように見えたのだ。「有難う!」、またしても幻聴が聴こえた。そうだ、また困ったことがあれば何時でも言ってきなぁ、でもナポリタンは無で頼むよ。

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