冷めたコーヒー 第29話

 新幹線での移動中、ウトウト寝ていたが、中年太りのだらけた筋肉では、さすがに体を支えきれなくなり、腰のあたりに鈍い痛みが走って目が覚めた。ちょうど通路側を車内販売が通ったので、眠気覚ましに熱めのコーヒーを購入、もちろんブラックである。車窓から見る外の景色は、灯り一つない暗闇が広がっているだけだった。その暗闇を眺めていると、なぜか宇宙空間を彷徨っているような不思議な感覚に囚われていく、すると何処からともなく誰かの会話が飛び込んできた。

 

 「この物質世界は、非常に強固に出来ているように見えるけど、常に揺らいでいるんだって、揺らぎがあるからこそ、物質世界はいつでも自由に組替えることが出来るんだとか、宇宙意識が言っていたらしい。」「それってどう言うこと?」「物質とは細かい光子のようなもので構成されていて、光子と光子が弱い力で引き付け合うことで物質化が起こっているんだって」「へー、細かい光子の塊が物質なんだ」「そのつなぎ目に宇宙意識の想いをぶつけると、物質は一度バラけて、また再構成されるらしい。」「それって、想い次第で、誰でも変わることが出来るってこと?」「この物質世界は、まだまだ進化する可能性を秘めていると宇宙意識は言っていたよ。」

 

 車窓の外を見ていたのは、ほんの一瞬だったはずだが、あれから1時間も経過していた。買ったコーヒーはすっかり冷え、到着駅のアナウンスに慌てて荷物を持って列車を降りた 

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