湯煙と不思議なシルエット 第32話

湯けむりの立ち込める雪景色の露天風呂はとても幻想的だ。シンシンと降る雪は辺りの喧騒を吸収し、静寂を提供してくれる。旅館の食事はとても美味しく、地元で採れた食材達がハーモニーを奏でている。あれだけの量がお腹に無理なく収まったのには驚きだった。食後は旅館周辺を散策し裏手にある古ぼけた社に不思議な感覚を覚えた。

 

 折角の機会、寝る前にもう一度露天風呂に入ってから寝ようと露天風呂に向かった。さすがに深夜の2時過ぎともなると誰も入っていないようだ。湯船に浸かり、ぼーっとしていると、誰かがこちらにやって来る気配がし、とっさに岩陰に身を潜めた。

 

すると湯煙の向こうには、ふさふさした大きな尻尾のようなシルエットが左右に揺れているのが見えた。「あっ!」さっきの社って「・・・」、温泉には色んなエネルギーがあふれている。入浴するのは人間だけとは限らない。誰かというのはあえて秘密にしておこう。

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