カネノナルキ、ルアネ 第42話

 出張先で出会ったカネノナルキは、ベンケイソウ科クラッスラ属の多肉植物、花月または、黄金花月とも呼ばれている観葉植物だ。訪問先の会社では肉厚な葉を沢山茂らせた鉢植えがズラリと並んでいる。以前からひと株分けてもらう約束をしていたのだが、中々そのチャンスは訪れず、カネノナルキを見る度に、「また今度ね」と頭の中でつぶやいていた。

 

 突然その機会はやってきた。並んでいるカネノナルキの中から何となく手に取った枝を分けてもらい、折れないよう大切に家に持ち帰った。家に帰るとすぐに花瓶に射し換え、根が生えるまでしばらくは水耕栽培し、根が生えたら鉢に植え替えてあげようと考えていると、「お願いします」と何処からか声がした様な気がした。

 

 10日ほど経って、根が生えてきたかどうか確認すると小さな白い突起物の様なものが数ヶ所アタマを出していた。カネノナルキも生きているんだなぁと実感していると、「お陰様です」とまた声がした。

 

 次に呼び名をどうするか、考えていると、「カネ子なんて呼ばないでくださいね」とカネノナルキがつぶやいた。どうやら考えていることが分かるらしい。「ルネ」そう呼んで欲しいみたいだ。確かに「ルアネ」と呼びかけるとうれしそうにしている様に見える。植物にも意思があることは分かっていたが、頭の中で考えていることまで分るなんて、これはこれで驚きだが、同時に戸惑いを感じた。

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