春のたより 第4話

 通勤途中の十字路、見慣れた風景、通勤時間、人通りも多い。「今日は今年一番の寒さだとニュースで言っていた」、行き交う人のはく息は白く、頬もピリピリと痛い。

この時期の楽しみは、暖かい缶コーヒーだ。カイロ代わりにもなり、飲めば体も温まる。

 

いつもの自販機の前に立つ、売り切れの表示、「今日はついていない」、他愛もないことで意気消沈する。他の自販機を探すため辺りを見渡す。

「あれ?こんな所に梅の木なんかあったんだ」、普段は気が付かず通り過ぎていた梅の木だ。「もうすぐ春がやってくるよ!」、誰かに耳元で囁かれたような気がした。

 

 周りには誰もいない。「空耳か?」、するとまた、「もうすぐ春が来るよ!」、また、聞こえた。梅の木を見ると小さな蕾がひとつ、またひとつ、枝の緑に顔を出し始めていた。

梅の木が春を告げているのだ、「早く来い、春よ来い」、春の訪れが待ち遠しくなった。

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