見知らぬ自分 第13話

けたたましい音に驚いて目が覚める。「何にごと?」記憶があやふやだ、「確か昨晩は接待でしこたま地酒を呑まされたような?…」、記憶が断片的で思い出せない。「うぅっ、頭が痛い、二日酔いか」、熱目のシャワーで体を目覚めさせる。「今日の打合せが午後からで良かった」、時計に目をやると、もう朝の9時半。

 

ホテルのフロントでは、チェクアウトの為に行列が出来ていた。「おはようございます。昨日はどうも!」、振り返ると見知らぬ人が立っている。「あのぅ・・・、昨日はいろいろとアドバイスを頂き、ありがとうございました。」、どうやら、酔っていた間にまた、見知らぬ自分が勝手にやったようだ。「とりあえず、迷惑を掛けていないようで助かった」、昔から、お酒を飲みすぎると見知らぬ自分が目を覚ます。

 

 多重人格症とは違う、見知らぬ自分、潜在意識の一部らしい。自我が解放されると出てくるようだ。

 最近、その頻度が多くなって来ている。自我が解放されやすい環境に世の中が変わってきたのだろうか?「いや、ただ飲み会の回数が増えただけ?」のような気もする。見知らぬ自分は誰もが内に秘めている「もう一人の自分」、その解放の時を待っている。そう遠くないうちに誰にでも分かる時がやってくる。「ほら、そこまで来ているよ」。

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