ワタシハ、シシリー 第14話

確か1年ほど前に花屋の店頭で、大きな蕾をつけたアマリリスの鉢植えを見かけた。大きな花を阿修羅像の様に咲かす花だ。今はもうベランダの片隅に追いやられている。この手の花は旬が過ぎると枯れてしまう事が多く、なかなか連続して咲かすことが難しいと聞く。

 

小春日和のある日、ベランダを掃除していると「ワタシハココニイマス、ワタシハココニイマス」、かすかだが人の話し声が聴こえて来る。声の方を探してみても誰も居ない。「おかしいな?気のせいかな?」、するとまた、「ワタシハココニイマス」、やはり聴こえる。それはベランダの隅にあるビニール袋の中からだった。

 

「ワタシハ、シシリー、キヅイテクレテ、アリガトウ」、アマリリスが話し掛けてきたのだ!良く見ると新芽が伸びており枯れてはいない。半年以上も水もあげていないのになんという生命力だろう。ビニールの中だったため、寒さから守られていたようだ。今では毎年夏が来るころには大きな花を誇らしげに咲かせるようになった。草花も生きている。小さな命に感動する。

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